アメリカにおける薬物過剰摂取による死亡者数がついに増加に歯止めがかかった

アメリカの薬物過剰摂取危機は、久しぶりに悪化していない。疾病管理予防センターの新しい予備データによると、フェンタニルやその他の合成オピオイドに関連する死亡者を含め、過剰摂取による死亡者総数は2023年にわずかに減少した。他の特定の薬物に関連する死亡者数は増加しており、一部の地域では依然として死亡者数が増加している。

CDCによると、2023年の過剰摂取による死亡者数は推定107,543人で、前年の111,029人から約3％減少した。オピオイド関連の死亡者数は特に3.7％減少したが、コカイン関連の死亡者は5％増加し、メタンフェタミン関連の死亡者は2％増加した。アメリカで報告された過剰摂取による死亡者数が減少したのは5年ぶりだ。

昨年は、致命的となる可能性のある過剰摂取の症状を確実に逆転させることができる治療薬であるナロキソンの市販薬が登場し、その頃には注射用ナロキソンの 再発する不足も解消されていた。今週 発表された研究によると、違法に販売されたフェンタニル錠剤の法執行機関による押収は2017年以降劇的に増加しており、2023年には1億1500万錠以上が押収されるという。しかし、これらの要因が過剰摂取による死亡者全体の減少にどれほど影響したかは正確にはわかっていない。

最新データは心強いものだが、数字は依然として過去の傾向をはるかに上回っている。例えば、2023年の死者数は2014年の4万7055人の2倍以上だった。このわずかな減少は、2020年に始まった死者数の劇的な増加に続くものである。

「過剰摂取による死亡者数は全国的に劇的に増加したわけではないが、3年連続で10万人以上が過剰摂取で亡くなることは絶対に受け入れられないし、新たな常態にはなり得ない」と薬物政策同盟の研究・学術活動担当副ディレクター、シーラ・ヴァカリア氏はギズモードにメールで語った。

ヴァカリア氏は、過剰摂取危機の被害はすべてのアメリカ人に平等に影響を与えているわけではないと指摘する。2018年に国内の過剰摂取による死亡者数は横ばいになったが、ネイティブ、黒人、ヒスパニック系アメリカ人の死亡率は横ばいではなかったと彼女は指摘する。そのため、昨年も同じ傾向が見られた可能性は十分にある。

ヴァカリア氏のような専門家は、過剰摂取の危機に根本的に対処するには、特にこうした死亡事故の影響を最も受けているコミュニティーのために、さらに多くのことを行う必要があると述べている。たとえば、ナロキソンの入手性拡大に加え、危害軽減の支持者は、オピオイド使用障害の治療薬として FDA が承認したメサドンとブプレノルフィンへのアクセス拡大を求めてきた。一方で、メタンフェタミンやコカイン使用障害の治療に特化した承認薬は存在しないが、いくつかの薬は有望であることがわかっている。

安全摂取施設など、支持者らが推進する介入策の中には、まだ広く実施されていないものもある。2021年にニューヨーク市に開設された最初の政府公認施設からの初期データは有望だ。こうしたプログラムにより、近隣での犯罪や公共の秩序の乱れの増加を引き起こすことなく、致命的な過剰摂取を予防できることが示唆されている。薬物使用者も、フェンタニルやキシラジンの検査ストリップが一般的に広く利用できるようになることで恩恵を受けることができ、供給品の汚染を排除できる。

「努力を緩めたり、勝利を宣言したりする時ではありません。人命を救うために、私たちがやるべきこと、拡大すべきことがまだたくさんあるからです」とヴァカリア氏は述べた。「命が失われるのは、1人でも多すぎます。それは誰かの子ども、愛する人、友人、家族の一員です。薬物の過剰摂取による死亡は防ぐことができます。」